老人と畑

土曜日、祖母に会いに水戸へ行った。前日、部下が定時後に救急車で運ばれて、その対応に追われた。心配しながら電車に乗った。上野でお土産として桃のゼリーを買った。4つで4000円くらいの良いやつだ、奮発した。祖母は2年前に会ったときに寿司屋で軍艦の海苔を喉につまらせたことがあった。固形食は食べられない気がした。

常磐線の鈍行で向かう。しかしこんなに遠かったか。気づけば中学生男子ふたりがボックスシートで歌を歌っている。全然うまくないんだけど、だからこそ音楽が好きなのが伝わる。窓には青い春、緑の稲、白い鳥。遠ざかる雲を見つめて。

祖母の家に着くと、畑が以前よりも盛んになっていた。たくさんの種類の野菜や植物が生っている。キュウリ、なす、トマト、唐辛子、紫蘇、ニンジン、里芋、ひまわり、、、。祖母はいま介護施設に入所していて、祖母の弱っていく姿と反比例して畑が栄えていたのは人生と呼んでいい。

父とふたりでご飯を食べたのは10年ぶりだったかもしれない。お腹の調子が本調子ではなかったけど、回転寿司に行った。旬だけあってアジの身が大きい。

その後、祖母に会いに介護施設へ。97歳。力のない身体。たがえている入れ歯。久しぶりすぎて誰だかわからねえよと悪態をつかれる。まだ当分は生きそうだ。しかし、その後は何を話しているのか聞き取るのに苦労した。握手した手にも力はなかったが、体温だけは少し高かった。

父は相変わらずで、介護施設の職員や病院の看護師と喧嘩したらしい。ただし、ちゃんと菓子折りを渡して筋は通したと誇っていた。正解はわからない。「試しに誰かと喧嘩してみる」生き方は果たしてどんな世界なのか。車の中では、仕事をしていて誰かに足を引っ張られたり、誰かに陰口を言われたり。そんな話を私にしていた。程度は想像することもできないが、父なりに苦労したのだと思う。兄は父のことが好きではないが、私は父のことを嫌いにはなれないので奥底では好きなのだと思う。

日曜日、参議院選挙に投票した。比例が最後まで決まらず、職員から投票用紙を受け取ってから決めた。10年前のはじめての選挙と比べれば世の中のことが少しはわかってきたと思う。少なくとも、信頼できるかできないかくらいはわかるようになった。会ったこともない人のことの信頼について判断しているというのは不思議なことだ。お土産に持たせてくれた桃を食べた。ももはなぜこれほどうまいのか。夕方に洗濯物を干した。翌朝見ると、夜のうちにびしゃびしゃになっていた。WTF