北アルプスの燕岳に登った。
大学時代の友人から数日前に誘われて急遽登ることになった。先月の誘いは体調面で不安があり断ってしまったが、この2週間は調子が良い。この分であれば職場にも復帰できそうだ。
朝、5時に起きる。寝坊が不安であまり熟睡できなかった。新宿駅で駅弁を買った。大月を過ぎたあたりから、紅葉がきれいで、今日はなぜ山に登るのか、なぜ1300mも脚で高度をあげるのかと疑問を持った。ちょっとだけ帰りたい。
バスが遅れたために一時間程度、友人を穂高駅で待った。のどかな駅なのでゆったりと時間を過ごす。
1時間後に穂高駅で合流。11時30分頃にタクシーにて移動し取り付きへ。麓の紅葉や、軒先の熟した柿が鮮やかで空に映えていた。
12時過ぎから登り始めた。登りは樹林帯が延々と続く。登り始めは汗がひどく、友人が快適そうに着ていた化繊インサレーションとフリースの混合レイヤーにも興味が出た。
パンや羊羮、干し梅、わらび餅、ゼリーなど、たくさん食べながら登った。息を切らしながら登っていたらいつの間にか15時を過ぎていた。合戦小屋を過ぎたあたりからは雪による凍結があった。二ヶ所危ない場所があったが、結局はアイゼンをつけずに登った。4時半頃に燕山荘に到着した。
晩飯前に小屋の近くで雷鳥のつがいを見つける。日暮れに染まる槍ヶ岳もきれいだった。晩飯はビーフシチューを所望していたがハンバーグ。おいしかったのでなんでもいい。代表のおじさんが登山や北アルプスについて演説するプレゼンは、経験や理論に根付く素敵なものだった。私は感銘を受けていたが、友人はもう7回聞いているからと居眠りしていた。
夜は9時半から2時過ぎまではよく眠れたがその後は目が覚めてしまい、起きていた。呼吸だけ深くなるように意識した。窓からの寒気は3時頃にマックスを迎えていた。
4時半に起床。朝食を早々に済ませ、ご来光へ向かった。途中でまたしても雷鳥のつがいに遭遇。このあたりが彼らの縄張りなのだろう。白い冬毛がモフモフしていてかわいい。
ご来光を待つ。雲海のなか雲間から顔を出した太陽は、あったかくて、ちょっとだけ希望みたいな顔をしていた。
富士山はどーんと鎮座していた。富士山の周りを頬のような赤みのビーナスラインが縁取る。表銀座の先の槍ヶ岳も強い存在感。
この日ほぼ最強の防寒対策のおかげか、なんとか耐えきる。断熱材の入った厳冬期用の登山靴だったが、30分以上待機したために足先は結構冷えてしまった。11月とはいえ、やはり雪山だ。
燕岳という山は海底二万メートルにあった花崗岩が隆起して出来た山のようで、白い砂れきのような岩の道を進む。山を登っているのに見た目はビーチのようで実態は岩なのが不思議だった。珍しい岩を見ながら山頂へ行き下山した。
下山すると、すぐに森林限界から樹林帯に戻り、最後の方はずっと奥多摩の低山みたいで、少し飽きてしまった(このあたりが百名山に入りきらない所以なのだろうか)。
とはいえ、燕山荘から伸びるなだらかな稜線の先にあった燕岳は、山肌の白さが華やかで、また稜線のなだらかさも、美しい肢体の曲線のようにも見える、良い山だった。冬毛の雷鳥に会えたのも嬉しい収穫だった。
下山途中に食べたお汁粉もおいしくて、最後に入った温泉も露天風呂が思いの外広くて、最後に飲んだコーラは泡と甘さで2日間の疲れを吹き飛ばしてくれた。
(以下、登山記録)
往路
12時10分 中房温泉登山口出発
16時30分 燕山荘到着
水と湯600CC、行動食:パン3つ、干し梅、塩タブレット、エナジーゼリー1つ、わらび餅1つ、羊羮1つ
復路
8時45分 燕山荘出発
11時25分 中房温泉登山口到着
湯300CC、行動食:お汁粉、干し梅、塩タブレット、エナジーゼリー1つ
(天候、気温)
晴れ、麓で6℃程度、山頂付近で-7℃程度、風速6m程度
(通常時の服装)
ドライレイヤー、ベースレイヤー(冬用)、ミドルレイヤー(かなり薄目のフリース)
薄目の手袋、ヘッドバンド、靴下は厚手
※合戦小屋までは樹林帯だったため、第三ベンチまたは富士見ベンチあたりまではベースレイヤーだけでも十分だった。
(稜線)※山頂往復と下りのみ装備した
ソフトシェル+ハードシェル(+ダウン)
ウール手袋
※バラクラバ、ゲイターは使わなかった