湊かなえ「告白」を読んだ

湊かなえ「告白」を読んだ。

中学生の学校生活を舞台にして、不穏の最悪を詰め込んだようなストーリー。

サイコパスなのにどこか人間的なキャラクターたち。登場人数はそれほど多くないのに魅力的だから惹き付けられていく。

冷えて陰湿な様々な事件が巻き起こり、ダウナーな気持ちになっているはずなのに、文字から目を離せば登場人物の心理に対する欲求が止まらない。人物の関係相関図を描かずにはいられなくなる。

エイズの感染力に対する知識や血液の混じった牛乳の色など腑に落ちない論理的歪さもいくつかあったが、致命的な穴はなく、彼らが起こす波に飲み込まれていってしまう。

 

新宿御苑のスタバで読んでいた。雨が降りそうだ。強い風で落ち葉がヒラヒラと落ちていく。ページに木漏れ日が差し込んだかと思えば、途端に雨模様に変わってしまった。聞いていたクラシックの音は耳から集中力に溶けて光のつぶつぶにまじっていった。閉店まで読んだ。

 

帰り道、夕方の都電では雨粒と夜を街頭が透かしていた。それらの光子が窓ガラスからページに降り注いできて、たった数秒しかないその光景はあまりに綺麗だった。すぐに端折れてしまうくらいか細い光景で、あのページは電子書籍には作れないほどきれいだった。