20190924 ザ・なつやすみバンド@ビルボード東京

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ザ・なつやすみバンドのビルボード東京公演に行った。振休と翌日の午前休まで取得して、準備は万端。初めて行くビルボード東京はラグジュアリーでファビュラスな会場だった。2000円するバジルの冷製カッペリーニ(ウニ添え)がしっかり美味しかったのがなんだか悔しい。この瞬間、この日は財布から福沢諭吉を抹消することを決めた。酒だ!

18時30分に開演。2部構成の第1部、彼らはリラックスしながらも儀式のような手触りで、なつやすみ(終)から始めた。中川さんのヴォーカルと他の楽器のバランスがすごく良かったので驚く。1曲目から期待が上がった。

発散したい気持ちをあえて落ち着けるような序盤の選曲、その4曲目に「またあしたジャーニー」をぶつけてきた。まるで拍子があるような選曲だ。トン、タタントン。

第一部の中後半に「麦ふみ」をやってくれたところで私のテンションは完全にぶち上がった。私が最後に「麦ふみ」を聞いたのは、2012年7月30日のTNB!レコ発@下北沢440。実に7年ぶりだ。あのライブは本当に素晴らしかったからYouTubeを漁ってほしいところだが、あの夜に1番衝撃を受けたのは「麦ふみ」だった。曲の構成が「Try a little tenderness」や「指輪をはめたい」のように変態していく。リズム隊の二人が1番生きていたからか、あの曲のおかげで彼らがライブバンドであることを信じられた気がする。

7年ぶりの「麦ふみ」もやっぱり息していた。7年前に中川さんやみずきちゃんから、初期のなつやすみバンドにおける「麦ふみクーツェ」の影響を聞いたことがある。麦ふみクーツェとは、いしいしんじが書いた音楽の小説だ。小説のなかで音楽が鳴っているように感じた作品で、本当に素晴らしいので是非一度読んでみてほしい。ネズミの雨、詐欺師のセールスマン、大きな鐘、倉庫のオケ演奏、ソープランドチェリスト、そんな物語がこの曲にも鳴っていたかもしれない。新しいアレンジの「麦ふみ」も楽曲の素晴らしさはなにも変わらない。

その後「せかいの車窓から、悲しみは僕をこえて、お誕生日会」の流れはこの夜でもっとも完璧な15分間だった。背景のカーテンが開かれたところで、あの場におけるささやかな祝祭とやさしい幸福は夜景によって積分された。観客の一人は熱いものが込み上げ、えもいわれぬ快感に包まれた。

2部はTerminalを中心にしながら、「パラード、PHANTASIA、映像」からも曲を呼んでいた。かなり斬新なセットリストで、新しい可能性を探っているようにも感じた。喪のビート、ファンタジア、summer cut、ハレルヤ、ユリイカ。いいぞもっとやれ。

サポート陣の貢献も厚い。この日、3-4時間のライブを浴びながら、本当に良い曲がたくさんあるバンドだし、なにより良いバンドであるということを改めて実感した。

TNB!は私の社会人人生とともにあったアルバムで、フジロッ久(仮)と同様に、ザ・なつやすみバンドもまた社会人として生活を送るうえで、温度計のような役割を果たしてくれた。彼らの音楽的な誠実さ、楽曲の素晴らしさは7年経っても変わることなく、いつも揺れ動く自分自身を計るかっこよさの指標として存在し続けてくれた。彼らがいまも音を鳴らし続けてくれることには感謝しかない。

彼らになにかを伝えたかったけれど、あのライブの後にはなにも言えない気がして、TerminalとTNB!のレコード、Tシャツを買って帰った。バンドの皆さん、本当にありがとう&おめでとう!歌う、絵を描く、抱きしめる。おれは山に登ってブログに残すよ。

愛を込めて。HAVE A GREAT SUMMER!良い青春を!